くつひもむすべない

一次二次問わずたまに18禁の小説を載せるブログ


 どちらから求め始めたかは覚えていない。
気づいたら唇を貪られていた。
一瞬で大包平の顔が目の前に広がり生温かさを帯びた口付けをされる。大包平の唇は少し乾燥していて柔らかいとは言えなかったが、何とも言えない心地良さが体を包み一時の快楽を創り出す。肩に回されていた片手は俺の腰に回りぐい、と自分の方に引き寄せるように力が込められた。"離したくない"という哀願のような思いが感じ取られ、こちらもどうしようもなく切ない気持ちになる。無意識にといっていいほど俺も大包平の背中に両腕を回した。大丈夫だと、俺は離れたりはしないと安心させるように慈しむようにわずかに力を込めた。
回された腕に安堵したのか、それとももっと求められていると思われたのかは分からないが大包平の舌が唇を割って侵入してくる。
多少強引とも言えるそれに思わず心の中で笑った。この男らしいと言えばらしい、強引で少し不器用だが愛情が伝わってくる。そんなところさえ、とても愛おしい。
肉厚の舌が入ってきて口腔内を好き放題に駆けずり回る。まるで舌だけ別の生き物かのような動きに体の内側から次第に熱くなってくる。視界はピンぼけした写真のように曖昧になり時間が止まったかのように感じる。
唇が突然離され、外気が口の中に入ってきた。視界のピントが合うと見慣れた顔に、いつになく頬が赤らんだ大包平が目の前に居た。
「…突然すぎ」
涎が垂れているような気がして口許を拭った。まだ口の中には奇妙な感触が残っている。
「そんな顔をしても満更でもないんだろう」
口角を上げて笑ってみせる。普段見る堅実そうな顔つきとは違って狡猾な笑みに体がズクリと熱くなる。
「そんな顔されるとさ、」
期待するだろ、という言葉を飲み込んでただ大包平の顔を見つめた。きっと奴を見つめる俺の目は粘りつくような眼差しだろう。大包平は俺の意思に答えるように立ち上がると俺の背後に回った。すると抱き込まれるように両腕が回され、身体が自由を失う。大包平とは体格差があるため自然と包まれてるかのような態勢になる。
「…なんだよ?」
「お前も興奮しているだろう?鎮めてやる」
大包平の囁き声が耳にかかり擽ったさを感じる。大包平の節ばった武骨な手が俺の袴に回される。前紐を外され弄るように手が這いずり回る。手の位置といい、まさか…
「ちょ、ちょっと待てって…」
「遠慮するな」
平然とした声とは裏腹に片手が昂りを捕らえた。興奮でわずかに勃起していたそれは奴の手に触れたことにより昂りをが益々増大した。
「凄いな、もうガチガチだぞ」
「言うなって…」
何か企んでいる様な声色に顔は見えずとも悪い顔をしてんだろうな、と思いながら紅潮した顔を隠したくても大包平に抱擁されているせいで腕を思うように動かすことができない。
昂りを撫でるように五指がバラバラに動く。上下に緩慢とした手つきで扱かれる。
次第に扱くスピードが速くなり体中を電流のような快楽が駆け巡る。突如手つきが緩慢になると、尿道口をなぞるように撫でられびりびりと痺れるような感覚が体を襲う。亀頭を指で擦られるとすぐにでも達してしまいそうになる。
「あっ……ん…」
「もっと声を出してみろ」
「むりに…決まってんだろ…外に聞こえるって…」
「気にするな」
「俺が気にするんだよ…!」
一つ溜息を吐くと扱いていた手が止まり、離された。手が離れてもなお治まらない興奮にばくばくと心臓も早鐘を打つ。すると、大包平が前に座り徐ろにスラックスを開いて自身の陰茎を出した。唐突なその様子に思わず驚いて動きが止まる。奴の逸物は俺のよりも太くて、逞しい
「あ…な、なにして…」
「こうすれば、お前だけ声を出すことにはならないな」
大包平の巨体が近づいてきて肩と肩がぶつかった。状況を理解した時にはすでに奴の逸物と俺の逸物が重なっていた。直ぐに擦るように揺さぶられ昂り同士がぶつかる。手で扱かれるよりも強い快楽に思わず意識が飛びそうになる。
「ん…あっ…ああっ…」
「……っ…くっ…」
思わず声が出そうになり片手で口を塞いだ。すると大包平の手が伸びてきて口を塞いでいた手を外される。
「なっ…おい…」
「声を我慢するな。お前の声を聴かせろ」
熱を孕んだ声につい従ってしまいそうになるが、唇を噛んで抑えた。すると今度は奴の唇が重なり阻止される。噛んでいた唇を舌で舐められ、また体温が上がる。啄むような口付けをされながら昂りを擦る動きは止まらず、それどころか段々激しくなっていく。いよいよ本当に達してしまいそうだ。
唇が離れると大包平が俺の耳元で囁いた。
お前の声が聴きたいんだ
縋り付く声に俺は堰を切ったように身体を震わせる。
「あっあぁっ……いくっ……もっ…むりっ……あっ……」
「一緒にイくぞ…童子切…」
大包平の言葉と同時に精を吐き出した。堤が決壊したように流れ出るそれに大包平も俺も暫く息を荒くさせて動けないままだった。
久しぶりだからか、それとも他人の手によるものだったかは分からずともいつもよりも量が多く濃い。全く、本当に何をしているのか俺は。
大包平は息を上げて顔を紅潮させている。俺の肩に凭れかかるように体を預けるとずしりと重みを感じた。凭れたまま動かない。まさか寝たんじゃないだろうな、この男は。
自分から仕掛けて来たくせにどうしようもない男だと嘆息をついた。