くつひもむすべない

一次二次問わずたまに18禁の小説を載せるブログ

相剋する境界線(プロット)

 これはまだ東の横綱が顕現していない世界線での話。

或る日大包平が出陣するとこれまで見たことないような敵と遭遇した。極めて人型に近いけど人とは思えないようなオーラを放っており、見たことはの無いが敵であることは分かった。大包平は倒そうとするが異様なほど強くなかなか倒せない。
刀の大きさから太刀なのだろうが、パワーとかテクニックとかとにかく今までの敵と格段に違う。大包平は何とかして倒すが、消える瞬間にそれまで余裕がなくて見てなかった顔を真近で見る。

どこかで見たことある顔。いや、見たことはないけど知ってるかもしれない顔。会ったことはないはずなのにそう感じる自分に大包平は困惑するんだよ。男士に似てる者が居るのかと思ったけど、考えてみても該当する者は思い浮かばない。それからあれが何だったのかはっきりせずもやもやしたまま時間が経ち、次の出陣であの敵と再度邂逅することに。

その時に留まらず、何度も邂逅する。何度斬っても何度殺しても、また次は何事も無かったように蘇る。そして様々な時代に出現する。大包平が出陣したら必ず。もしや自分以外の男士にも接触していると思い、他の男士にも聞いてみたが大包平が求める答えを返す者は居なかった。

ある日、大包平が"その敵"と何度目かの邂逅をし、"その敵"がいつもとは違うことに気づいた。何やら口を動かしているように見える。まさか話そうとしている?そして自分になにか伝えようとしているんじゃないかと思ったが、何と話しているのか聞き取ることはできなかった。

「-------、-----、----------」
人が発するとは思えない獣ような低い唸り声に、最初に出会った時よりも人の形から離れ化物に近づいていっている姿。片腕は人の腕のようなのに、もう一方の腕は太く隆々としていてまるで"鬼"のよう。禍々しい殺気に大包平は取り敢えず倒さないといけないと思った。

"その敵"はいつもより抵抗しているように感じた。そしていつもより様子がおかしいような。いつもより鬼気迫っているような。双方の死闘の末に大包平は"その敵"の首を狙った。いつもは首なんて狙わないし、何故その時首を狙ったのかも分からない。だが、刀が引き付けられるように首を捉えた。

(※若干注意) 一瞬だった。斬れ味にも申し分ない大包平の刃は紙でも切るようにすっぱりと"その敵"の首を刎ねた。まさに一刀両断。瞬間的に"その敵"と目線があった。猟奇的な状況の中の刹那的な視線に大包平は思わずその眸の奥の真意を理解してしまったように思った。そして大包平はその顔が何なのか。

分かったような気がした。胴体と離れた頭は地面に落ちる前に砂のように消えていった。胴体も瞬く間に跡形もなく失せた。大包平は頭の中に一瞬浮かんだ名前と先程の"あの顔"が繋がったことにとてつもない違和感と不快感を覚えた。なぜそんなことを思ってしまうのか、考えてもわからなかった。

それから幾らか経った頃。本丸に新しい刀剣男士がやって来た。いよいよこの本丸にも待望のあの男士がやって来るのだと、いつもより騒がしい。やがて新たな仲間が姿を現した。周りの男士たちが歓迎の言葉を各々に述べている中、大包平はその刀剣男士の顔を見てただ一人呆然とした。

少し前、何度も何度も邂逅した"あの顔"がそこに在ったのだ。前よりも格段に"人らしい顔"をして"どう見ても人の腕"をしている。穏やかな雰囲気をまとっていて、どこからどう見ても"普通"の"刀剣男士"だ。新しい仲間が大包平の方にやって来た。人当たりの良さそうな柔和な笑みを浮かべている。

「久しぶりだな」
不意に言われたその言葉に大包平は一瞬反応に送れる。
「お前...」
表情は変わらない。普通であれば好印象のその笑みも今は不思議と不気味に思う。久しぶり、という言葉に大包平はその意味をすぐに理解した。
「まさか忘れた…なんて言わないよな?"お前がころした"童子切安綱だよ」